ノイズと小説、例えばアヒム・ヴォルヘイドとシオドア・スタージョン

「Stiff Kittens」をリリースした「shotahirama」さんに 「ノイズと小説、例えばアヒム・ヴォルヘイドとシオドア・スタージョン」というテーマで8枚のセレクトを行なっていただきました。

shotahirama
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31/5/1962-1982

さぁ、ノイズのはじまりだ。自分のクソほどに貧相なイメージが頭蓋骨の隙間から空へと噴き散る感動。銃声と爆撃音だらけの引き攣られた音楽、それまで沈殿していた冷たい暴力も煙の如くドクドク伸びれば、そこ目掛けと駆け寄る無数の馬には美しさすら宿る。こんなノイズミュージックに脳みそ撃ち抜かれるなんて。ノイズと暴力に塗れ澱んだ音楽にはコーマック・マッカーシーの小説を。

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Formen Letzter Hausmusik

死刑台に吊るされた2本のロープ、響き以外の音楽的要素なんて脆くて無意味だ。一次視覚野が男の舌の上で宙吊りにされている、すべてを剥いだあいつが命乞いをしているかのようでなんとも滑稽。想像を軽く超越する物語と、決して音になり得ないページとインクとテキストが眼球の裏側で爆音のノイズと化す。チューニングの狂った静かな歴史的音響作品にはスティーヴ・エリクソンの小説を。

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Ogre-Sse

黒い壁は知覚外宇宙で、天井に吊るされた蝋燭はまるで太陽とでも呼べる発光体。それならば今ここに浮かぶ音楽はなんだ、死んだ月か。シンセティックなコンクレートミュージックに身体を掴まれる現実は幻視された左回りの世界。あまりにも高度な反復感と構造を持たない痩せた音楽、まいった、恍惚とする。アヒム・ヴォルヘイドのギターにはシオドア・スタージョンの小説が良く似合う。

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Sprung Aus Den Wolken ‎

素っ頓狂という言葉が面白い程この集団に当てはまる。調子はずれの声を出すさま、突然とその場の雰囲気にそぐわない言動をするさま。パレシャンブルグが賢くみえるさま。僕にとってのポストパンクはノイズの空騒ぎで、空虚なハピネスに満ちたもの、渇いた笑いで愛してくれ。ノイバウテンのハッケにはトマス・ピンチョンの小説を渡せばいい、そしてこう告げる、ヴァインランドぐらい笑える音楽だねって。

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Physical Evidence

惑星間の暗闇から突如と現れるヴォイド・ライス。やりきれない妄想に取り憑かれて、どんなに目を瞑っても眠れない。強迫観念に押さえつけられてとにかく苦しい、涎臭い叫び声には時空がねじれるほど歪んだエコーがかかってる。死ぬほどつまらない日常を激しく咀嚼してくれるこんなクソみたいなノイズミュージックに何度も救われる。サミュエル・ディレイニーの小説と一緒に魔法にかけられてみろ。

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Upic Warp Tracks

あらゆるものの存在と、例えばその複製が混在する仮想現実な世界があるとして、そこからのシグナルこそがこの音のすべてだと妄想する。想像力の限界を超えていくスリル。情報化した文明とそれが産み落とすパンクとデータベース上のブシュケ。アナログや人間的感情など基本コントロール可能なものすべてを抑制したあまりにも未来的なグリッチミュージックにはグレッグ・イーガンの小説を。

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Erector

混種の考え。機械と人間の2項間を結合させたサイバーパンクソシアリズム。現代が抱くユートピアに対するアンチテーゼ、そんな空想ディストピアをステイプルトンによるジャケット/ガジェットで表明。100年先をゆくパワーエレクトロニクスは国家統一を目論むホワイトハウスにとってたった一つの外交政策。こんな文章に踊らされる人がいるなら抱きしめたい、呆れるほどに。ウィリアム・ギブスンの小説を。

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Stiff Kittens

あれ、僕のアルバムだ。自分のアルバムについて何かを語るなんて、もう何年も前にやめちゃった。本当のことなんて絶対喋らない。だけれど、このCDに封入されているライナーノーツに、僕の作品との比較で素敵な一冊が挙げられていたのでそれを薦めたい。ジョセフ・コンラッドだ。