プロデューサーの Jason Swinscoe を中心に、その名が示すとおり、目を閉じれば映像が沸き立つ、映画のような音楽を奏でるバンド The Cinematic Orchestra 。前作「Everyday」から5年の時を経てリリースされたのが本作「Ma Fleur」だ。オープニングを飾るのは、ピアノと弦楽のアンサンブルをビートレスで聴かせる "To Build a Home" 。この存在感がアルバムの方向を決定づけている。前作では、スピリチュアルな世界観の中にもベースとドラムの躍動がダンス・フロアを想起させる場面があったが、今作はより深遠な音世界に誘う楽曲が中心。アコースティック・ギターが切なく響く "Colours" や "Music Box" 、涙がこぼれるほど心に響くボーカル曲 "Breathe" そして "That Home" などは聴く者の脳裏にそれぞれの人生の記憶が走馬灯のように駆け巡ることだろう。また弦楽の美しさが堪能できるタイトル・トラック "Ma Fleur" や "Prelude" ではそうした熱を帯び、高揚した感情の起伏を鎮める効果を持ち、アルバムの中に動と静のアクセントを持たせる。ゆったりと、音と一体となって、心地よいヴァイブに身を委ねたい。こうしたアルバムが、 Ninja Tune という愚直なまでに良質な新しさを求めているレーベルからのリリースであることもうれしい。(iTunes Reviewより)