レクイエムは魂を鎮める曲であり、泣き叫んだり強く訴えかける曲ではない。だから合唱も独唱も、オーケストラも、そしてオルガンも声高になることはほとんどなく、ささやくような音を中心に組み立てられている。 ところで、ささやき声、つまりウィスパー・ヴォイスというのはミステリアスな雰囲気を漂わせるものだ。そして場合によってはコケットなところもある。もちろんレクイエムにコケットという言葉は合わないし、不謹慎でもあるだろうけども、この曲で全編にわたって重要な役割を果たしているボーイ・ソプラノの甘く軽いささやきが、くすぐったいような感覚をもたらすことは否定できない。死という重い題材を扱いながら、むしろ明るさを感じさせるのは、このボーイ・ソプラノのウィスパー・ヴォイスに大きな要因があるのだ。 フォーレは、クネクネとした教会旋法的なメロディーの動きを巧みにあやつり、そこに近代的な響きをまぶしていく。深刻ぶった表情はほとんど見せず、洒落っ気さえ感じさせる。第5曲「アニュス・デイ」のイントロ部分は恋愛映画のサントラに使えそうだし、第7曲「イン・パラディズム」でのオルガンにいたっては、ラウンジ・ミュージックのファンを喜ばせそうだ。レクイエムは本来つらく悲しい気持ちを癒すためのものだが、楽しい気分のときも、このCDを取り出して聴いてみて悪いことはひとつもない。(Amazon.co.jpより)
SongList
- Requiem, Op. 48: I. Introït et Kyrie
- Requiem, Op. 48: II. Offertoire
- Requiem, Op. 48: III. Sanctus
- Requiem, Op. 48: IV. Pie Jesu
- Requiem, Op. 48: V. Agnus Dei
- Requiem, Op. 48: VI. Libera me
- Requiem, Op. 48: VII. In Paradisium